幅広いスポーツ用品を手がける株式会社デサントの新しいスポーツアパレル研究開発拠点、それが「DISC」です。建物のコンセプトは、「世界一、速いウエアを創る」。コンセプト実現のために、どのような過程を経たか。リベットルーフはどのように役立ったのか。設計された方へのインタビューや、各部分の詳細なレポートを通じて、明らかにします。
本ページは「現場レポート32号」掲載「株式会社デサントR&Dセンタープロジェクト」について、再編集を行い掲載いたします。インタビュー完全版については、以下よりご確認ください。
(現場レポート32号)
Interview with 株式会社竹中工務店 岩﨑 宏氏
「見せる」ために塩ビシート防水を採用した
設計を担当された株式会社竹中工務店の岩﨑宏氏にインタビューを行いました。設計において、どんなコンセプトがどんな過程を経て建築物として結実したか。そこで防水材はどのような役目を担ったかをおうかがいしました。
Q1:どんなコンセプトがあり、本建築に結実していったのでしょうか?
「速いものは必ず美しい」。この言葉は、スピードとフォルムを追求してスポーツ用品をデザインしてきたデサントのスピリットを表すものです。私達も当初から、ウェアは空気抵抗を極限まで減らそうとすると、縫い目をいかに無くすかなど、細部にまで配慮する必要があるといった話しをおうかがいしていました。
弊社、竹中工務店も同じ姿勢を持っています。お客様の思いに寄り添い、建築物に求められる機能とデザインの融合を細部に至るまで徹底的に追求していきます。製品開発と建設。異なったジャンルですが親和性を感じました。
試行錯誤の末、行き着いたキーワードが「ベクトル」でした。建物は、幹線道路2本に挟まれた小高い丘に位置します。敷地が持つベクトルと建物の持つベクトルが重なるように5枚の屋根で構成し、外観をデザインしました。デサントのスピリットである「速さ」や「果敢さ」を想起させるようなカタチになっています。
Q2:「ベクトル」というキーワードと構造や内部プランとの関係は?
建物の機能とデザインが同じ「ベクトル」を持っていなければなりません。本建築は、製品開発の場です。快適に、スピード感を持って製品開発が行えることが、本建築に求められた機能です。
そこで内部プランでは、執務空間を中心に、縫製や製作、解析を行う空間を両サイドに併設させました。ガラス壁などを活用し、シームレスな一体感のある空間にしています。
例えば、研究者が自然にアドバイスを求めたりできるように。建物内のどこにいてもどのような開発が進んでいるかを肌で感じられるようになっています。同時に、周囲の緑豊かな自然を感じ、窓から多くの光を取り込んだ、開放感のある空間にしています。この空間を成立させるために、V字の柱がひとつのポイントになっています。この形状にしたことで、柱を細く、窓を大きく取ることができました。また、床吹出し式の空調設備としたことで、天井高も確保し、開放的な空間の構築ができました。
V字の柱は、外観に現れる“斜めのライン”ともリンクします。また、屋根構造でみても、V字の柱は屋根スパンを短くし、梁せいを抑えられるというメリットにつながります。通常、S造であれば屋根高さは1,500mm程度にはなります。ですが、本建築では一般部650mm、先端部で160mmというシャープなフォルムを実現できました。建物各部の構造、デザイン、内部プランなどのすべてが同じベクトルを持つようにオーガナイズしています。
Q3:塩ビシート防水の採用理由やメリットについては?
当初は、ガルバリウム鋼板やアスファルトシングルの屋根なども検討しました。しかし、ガルバリウム鋼板では屋根勾配を大きく取らなければならない。アスファルトシングルでは、黒く重たい印象になるなどの課題がありました。そこで、塩ビシート防水を採用しました。
最大の採用理由は意匠性です。本建築は、低層からも、近隣からも「屋根面が見える」という特徴があります。塩ビシート防水は、見た目にも重量的にも軽量です。スピード感をたたえた屋根にはうってつけの防水材だと考えました。また、天窓を多く設けています。光の反射を適度に抑え、室内に入る日射量を調整できる事もメリットでした。
Q4:本建築を離れて、塩ビシート防水の印象や今後の課題については?
建築物による防水材の使い分けはあります。RC造で屋根面が見えず、荷重も気にしなくてよい場合、露出アスファルト防水や保護コンクリート仕上げなどが候補になるでしょう。本建築のようにS造であれば、軽量で、性能面も満足でき、意匠性も備わった塩ビシート防水が選択肢に入ってくると考えます。
ただ、塩ビシート防水はもう一段階進歩して欲しいと考えます。屋根を見せる建物を前提に考えると、さまざまなテクスチャー(質感)を選べるようになればと思います。また、屋根をフラットに見せたいというニーズもあると思います。そのため、シート固定金具の凹凸がより目立たない仕様や部材などの開発がなされることを期待しています。
Q5:今後の展望については?
本建築もそうですが、いかにお客様の思いに寄り添い、期待以上の作品を実現していくかということは常に考え続けたいです。その建物を使う人、その建物のある風景、その建物がある地域の生活が良い方向に変化するようなプロジェクトが実現できればと考えます。
コンセプトを表現した建物形状。
「LCS工法」と「NPシステム接着工法」が可能にした納め方とは。
屋根部分は、建物構造への負担を減らす「LCS工法」が採用されています。
また、ケラバ・軒先部分に、「NPシステム接着工法」を採用することで、建物をシャープに見せる屋根造りを可能にしました。
LCS工法採用部位の詳細
LCS工法で軽量な屋根を実現
平場部は、軽量な屋根を構築できる「LCS工法(チューブワッシャー仕様)」が採用されています。日光の反射をやわらげ、天窓からの入る光量を調整できる色彩である、リベットルーフSWのライトグレーが選択されました。
屋根形状に合わせた外断熱仕様
「スポーツパフォーマンススタジオ」の屋根は段差がついており、断熱性能を重視した事から、LCS工法で納めています。
NPシステム接着工法採用部位の詳細
“スリット”のように屋根デザインに溶けこむ軒樋
地上から眺めた時に「ドレン」が見えないように、角度や深さが配慮された軒樋として設計されています。
DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX
| 構造 | S造 |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府 茨木市 |
| 施主 | 株式会社デサント |
| 設計 | 株式会社竹中工務店 |
| 施工 | 株式会社竹中工務店 |
| 防水施工 | 株式会社ベルテック |
| 建物の種類 | 研究所・工場 |
| 新築/改修 | 新築 |
| 施工時期 | H30.3〜H30.7 |
| 下地 | 金属下地(折板/耐火デッキプレート/瓦棒屋根など) |
| 仕様・規模 | 【LCS工法】MIHFD-SW15NU:3,500㎡ 【NPシステム接着工法】FFD-SW15NP:300㎡ |
| 断熱仕様 | 外断熱工法 |
| シート固定方法 | アンカー固定 |
















