屋上防水で社会を支える アーキヤマデ

リベットルーフが、再び万博の屋根を支えます。

大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn

提供:(公社)大阪パビリオン

リベットルーフが、再び万博の屋根を支えます。

5 5年ぶりに大阪で開催された大阪・関西万博。地元自治体として出展する大阪ヘルスケアパビリオンに、リベットルーフ防水が採用されました。本建築は、「REBORN」をテーマに、光・木・水を再構成する環境共生建築として計画され、多くの来場者に多様な体験をもたらしました。雨と光を受けとめる膜屋根と、建物を守る陸屋根が重なり合い、軽やかで有機的な外観を形づくっています。この建築の発想がどのように生まれたのか。その詳細を設計者の言葉とともにお伝えします。

本ページでは、現場レポート39号掲載「大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn」について、再編集を行い掲載いたします。インタビュー完全版については、以下よりご確認ください。
(現場レポート39号掲載)

膜屋根には循環した水が流れ、光・木・水に包まれたアトリウムを形成。木らせん柱とスロープが、 来場者の視線と動線をやわらかく上へと導きます。
膜屋根には循環した水が流れ、光・木・水に包まれたアトリウムを形成。木らせん柱とスロープが、 来場者の視線と動線をやわらかく上へと導きます。
陸屋根にはリベットルーフ防水が採用。多くの部分にLCS工法を用いて、軽量かつシンプルな構造で万博開催までの工期短縮に貢献しました。
陸屋根にはリベットルーフ防水が採用。多くの部分にLCS工法を用いて、軽量かつシンプルな 構造で万博開催までの工期短縮に貢献しました。

Interview with :東畑建築事務所
光・木・水を再構成する環境共生建築、2 つの屋根で支えたパビリオン

5 5 年ぶりの大阪開催となった万博で、多くの来場者を迎えた大阪ヘルスケアパビリオン。
その特徴的な建物の意匠や構造は、どのような発想から生まれたのか。
本特集では、設計者である東畑建築事務所 平野尉仁さんにプロジェクトについて、お話をおうかがいしました。

東畑建築事務所は、公共・医療・教育施設など社会性の高い 建築を手がける組織系設計事務所。意匠・構造・環境を横断 する総合的な設計力を強みに、大阪ヘルスケアパビリオンで 有機的な形態と環境技術を統合した建築を実現しました。
株式会社東畑建築事務所 本社オフィス大阪 設計室部長 平野尉仁氏 代表作:真庭市落合総合センター(公共建築賞、農林水産大臣 賞他)東京大学(駒場Ⅰ)新体育館、芸術文化観光専門 大学、同志社大学 致遠館、京セラ株式会社きりしま R&Dセンター(日経ニューオフィス賞、九州経済産業局長賞他)、大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn、武庫川女子大学 環境共生学部プロジェクト棟 他

REBORN” のテーマを建築で表現するコンセプトが形づくられる過程

Q1.”REBORN”というコンセプトをどのように建築へと展開していったのでしょうか?

今回は55年ぶりに大阪で開かれる万博で、しかも大阪府・大阪市が地元自治体として“大阪を発信する建築”を示すパビリオンでした。設計者選定は公募プロポーザルで、「REBORN(人は生まれ変わる、新たな一歩を踏み出す)」というテーマのもと、「地元自治体である大阪にふさわしい外観」「SDGs・脱炭素社会に向けた環境建築」という3つの要件が示されました。

大阪らしさをどう建築で表現するかはかなり悩みましたが、チームで議論を重ねる中で、光・木・水などの自然が重なり合い、環境と共生する建築というコンセプトが見えてきました。有機的なかたちと連続する動線のイメージを図面や模型に落とし込んでいく過程で、建築の姿が徐々に共有されていきました。その後、2025年日本国際博覧会大阪パビリオン推進委員会において建物の愛称が検討され、外観デザインや出展テーマとの親和性から、「新しいものを生み出す“巣(Nest)”」という考え方をもとに、建築を象徴する名称が決定しました。

光・木・水をコンセプトとして束ね、来場者の体験に落とし込んだ設計

Q2.具体的に3つの要件をどう設計に落とし込みましたか?

3つの要件はそれぞれ別々のように思えますが、設計では、(1)大阪の新たな成長を発言するランドマーク、(2)有機的につながる回遊性、(3)自然を感じる環境共生建築という3つの“視点”として再整理し、建築全体の軸としています。

まず「大阪らしさ」については、大阪が海と川に開かれ、全国各地の木材が集まり、成長してきた街であることを起点にしています。「水」が流れる「膜」で構成された多様な屋根の集まりが、「木」の建築を覆うという構成とすることで、多様な個性が集まり発展してきた大阪の姿を重ね、新たな成長(REBORN)を発信するランドマークとして表現しています。

次に、来場者が"体験"としてパビリオンを辿れるように重視したのが有機的な回遊性です。展示室とアトリウムを楕円形の平面で重ね、すべてをスロープで連続させた「ひとつながりの動線」としました。これは、ベビーカーや車椅子の方を含め、すべての来場者が同じ展示ルートを等しく体験できるインクルーシブな建築を具現化したものです。また、楕円形は「生まれ変わる=卵」を、木らせん柱は「DNA」から着想しており、外観を形づくる多様な屋根も複数の球体をトリミングして生まれた有機的な形状です。

さらに、建築を自然と結びつける視点として、「自然を感じる環境共生建築」を掲げています。膜屋根には軽量で透明性の高いETFE 膜を採用し、日中は自然光を取り込み、照明負荷を軽減しています。屋根上には、循環させた水が屋根全体を包み込むように流れ落ち、屋根の先端に集まった水が滝のように水盤に流れ込む仕組みを設けました。“水が建築をめぐる”体験そのものが自然との共生を表しています。素材選択においても環境配慮を重視しています。透過光を柔らげる「和かみシェード」をはじめ、炭素を長期固定する木材、低炭素コンクリートなど、環境負荷を抑える工夫を重ねています。
光・木・水、そして環境意識が重なり合うことで、来場者は“環境配慮”だけではなく、自然の循環の中に身を置くような体験ができるパビリオンを目指しました。

1~4 の写真は(公社)大阪パビリオン提供

2つの屋根がつくる、光と空間の関係
膜屋根と陸屋根、それぞれの役割

Q3.「アトリウムの膜屋根」と、「陸屋根」の関係性は?

どちらが主従というより、役割の違いです。アトリウムとなる膜屋根はE T F E (高機能フッ素樹脂)で“透ける屋根”をつくり、流れる水や光を受けて空間の軽やかさと象徴性を担います。
ただ、展示では「光を遮って集中してほしい」場面もあるので、閉じるべきところはリベットルーフで“閉じる屋根”として外皮性能をきちんと確保しました。さらに両者は軽量化という点で共通しています。

E T F E はガラスの約70分の1の重さで、建物全体を飛躍的に軽くできました。リベットルーフも乾式デッキに断熱材を重ねることで、軽量な屋根を構成します。この「軽量化」という点が、これからの建築のキーワードになると考えています。建物が軽いことは地盤への影響を抑え、基礎や杭も最小限で済むので、結果として、環境への負荷を減らすことに繋がります。

つまり、「透ける屋根」と「閉じる屋根」は、それぞれが体験と性能の両面を担い、異なる役割を合わせることで建築全体を成立させています。

さまざまな形状になじみ、下地条件に適応するリベットルーフ

Q4.「リベットルーフ」をお使いただき、いかがでしたか?

最もメリットと感じたのは、やり「軽い」ことですが、建築の特性上、「下地をあまり選ばない」ということがとても役に立っています。今回ですと、耐火デッキプレートを基本としていますが、部分的に合板で屋根下地の形成が必要な箇所もありました。そういった下地条件にも対応できたのは助かりました。塩ビシート防水というものがなければ、結構困っていたかもしれませんね。カーブを描くパラペットや複雑な立上りが多いのですが、シート防水は工場生産のため膜厚管理が容易で、施工によるバラツキも少なく、何より工期短縮になった点は良かったです。

防水・断熱・耐火を一体で満たす、扱いやすい屋根づくり工法。

Q5.採用いただいた「LCS工法」の評価は?

別件でも使わせていただいていますが、とても使いやすい工法だと感じています。屋根でまず求められるのは「雨を止める=防水」と、太陽からの熱負荷に応える「断熱」です。その二つを、デッキプレートの上に断熱材を敷き、その上にシート防水を載せるというシンプルなセットで実現でき、さらに耐火性能まで一体で確保できます。乾式で軽量なので下部構造への影響が少なく、設計上も施工上も扱いやすい。結果として、使い勝手の良い屋根の選択肢となっていると感じます。

解体する部分は軽く、残す部分は強く。条件に応じた合理的な工法選択。

Q6.解体する部分と残す部分の防水の使い分けは?

「解体する部分」と「残す部分」とでは、求める要件が異なりました。解体側は半年で役目を終える仮設なので耐火までは要らず、できるだけ軽く、早く施工できる乾式仕様でまとめています。一方、残す側は屋根もきちんとした性能が必要になります。
そこで、新工法(LCS工法GF接着仕様)を提案いただき、採用となりました。デッキプレート上に断熱材とシートを一体で貼り、軽量でありながら固定力も確保でき、海沿いの風に耐えられる仕様となりました。断熱性能も高いので、環境配慮という点でも両方の条件にうまく応えられたかなと思います。

本工法は、耐火デッキプレートの上に専用接着剤で断熱材を確実に固定し、その断熱材にリベットルーフを全面接着する工法です。シートの浮きや剥離を抑え、強風下でも安定した防水性能を発揮します。

環境と人に寄り添う建築を目指して。

Q7.来場者や社会に対して、建築に込めたメッセージは?

建築という意味では、「建築が人と環境のあいだをつなぐ存在で今回の経験は、設計者としても事務所としても、いくつかの意味で転機になったと感じています。ひとつは設計手法です。今回、事務所ではプログラミングによる設計や3Dプリンターの活用など、新しい切り口を試すきっかけになりました。もうひとつは素材への意識です。木をはじめ、和かみシェード  広島平和記念公園の折り鶴の紙を再利用したもの  のように、自然素材やリユース素材を積極的に取り入れる意識が、自分の中で少しずつ強くなってきたと感じます。

また、当事務所は個人名で語られる作品というより、いろんな人が関わって「多くの人が心地よく使える建築」をつくる組織事務所です。このパビリオンでも、その方向性がある程度かたちになったと思っていますし、万博後もこうした取り組みを続けていく、いいきっかけになりました。あってほしい」というメッセージです。

アトリウムを彩る日除けシェードは、リサイクルパルプ入りの紙を糸状にして織り上げた サステナブル素材「和cami(わかみ)」を使用しています。
アトリウムを彩る日除けシェードは、リサイクルパルプ入りの紙を糸状にして織り上げた サステナブル素材「和cami(わかみ)」を使用しています。
膜屋根の複雑な形状はコンピュテーショナルデザインで複数の球面を組み合わせて 生まれたもの。3Dモデリングにより条件変更にも即応でき、プログラミングの最適化で トラス割付も合理化され、施工性の向上につながっています。
膜屋根の複雑な形状はコンピュテーショナルデザインで複数の球面を組み合わせて 生まれたもの。3Dモデリングにより条件変更にも即応でき、プログラミングの最適化で トラス割付も合理化され、施工性の向上につながっています。

万博での設計がもたらした、建築への多様な視点。

Q8.万博での設計経験をどのように受け止めていますか?

パビリオンに来られた子どもや大人の方にも、行く前とは少し違う自分になって帰ってもらえたら嬉しいな、と思っています。アトリウムに入って、光や木、水の流れの中で、25年後・2050年の未来に思いを巡らせながら、広い意味でいろいろなことを感じていただきたいですね。

建築という意味では、「建築が人と環境のあいだをつなぐ存在であってほしい」というメッセージです。資源をたくさん使い、廃棄物を出す“ハードな建築”ではなく、自然にも人にも寄り添い、その間に立ってつなぐような建築でありたい。その象徴が、ひとつながりの動線です。多くのパビリオンでは車椅子の方だけエレベーターですが、ここはどんな方が来ても同じルートを歩きます。マジョリティとマイノリティを分けない、「全員が平等です」という意識を形にしました。水が流れる風景は万博らしい“お祭り”の側面もありますが、本当に伝えたいことは、“建築が制約になるのではなく、自然と人をやさしくつなぐ媒介になってほしい”ということです。

スロープにより誰もが同じルートを巡れる、インクルーシブな設計。一体的な回遊動線の中で、木らせん柱と膜屋根が来場者に“空を見上げる体験”をもたらします。

大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn

構造 S造・木造
所在地 大阪府 大阪市
施主 公益社団法人2025年日本国際博覧会大阪パビリオン
設計 株式会社東畑建築事務所
施工 株式会社竹中工務店
防水施工 フタバ興業株式会社
新築/改修 新築
施工時期 2023年4月〜2024年10月
下地 金属下地(折板/耐火デッキプレート/瓦棒屋根など)木・ボード下地
仕様・規模 LCS工法 1,650㎡、LCS接着工法(GF仕様)850㎡、アンカー固定断熱工法800㎡
断熱仕様 外断熱工法
シート固定方法 接着,  アンカー固定

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